それって本当にDX?デジタル化とDXの違いをわかりやすく解説|美容室のスマートミラーの例も
「DXやってます」と言いながら、実は“デジタル化止まり”の企業が多い
「うちもDXに取り組んでいます」とアピールする企業は増えていますが、実態を見ると多くが“単なるデジタル化”にとどまっているのが現状です。
例えば「紙の申込書をPDFにした」「日報をExcelにした」「Zoomを導入した」といった取り組みは、DXではなく単なるIT化(デジタイゼーション)にすぎません。
まず理解すべき3つの段階:「IT化」「デジタライゼーション」「DX」
- IT化(デジタイゼーション): アナログ作業をデジタルに置き換える(例:紙→PDF)
- デジタライゼーション: 業務全体をデジタルで効率化(例:クラウド勤怠・電子契約)
- DX(デジタルトランスフォーメーション): ビジネスモデルや価値提供そのものの変革
DXとは「仕組みの変革」であり、「やり方の効率化」ではありません。
DXは「顧客の価値体験」を再設計すること
真のDXは、「顧客に届ける価値」自体を見直し、体験をデジタルで再設計することにあります。
例えば:
- ・従来は電話予約だった美容室が、アプリでの予約・カルテ管理・ポイント付与を自動化
- ・飲食店が店舗注文からモバイルオーダー+非接触決済+レビュー管理までを一元化
- ・製造業がIoTで稼働状況を可視化し、サービス型(サブスク)に転換
美容室におけるスマートミラー活用は“顧客体験の変革”そのもの
美容室の現場では、単なる業務効率化ではなく、顧客の体験価値を再設計するDX事例が登場しています。代表的なのが、スマートミラーを活用した以下のような取り組みです。
AIスマートミラー「Mirart(ミラート)」
Mirartは、AR・AI機能を活用して、ヘアスタイルやカラーのシミュレーションを可能にしたスマートミラー。
来店前の事前カウンセリングや、施術中のスタイル提案、施術後の画像共有まで一貫して顧客とのビジュアルコミュニケーションを支えます。
スマートデバイスミラー「ECILA(エシラ)」
ECILAは、タカラベルモント社が開発した次世代型ミラー。
顔診断やカラーシミュレーション、商品レコメンド機能を通して、お客様の“なりたい”を可視化し、共感ベースの提案を支援します。施術後の動画撮影やマイページ連携も可能で、再来店までの体験をトータル設計する仕組みになっています。
いずれも、従来の会話ベースの接客では見えにくかった「感性」や「ニュアンス」をビジュアルで共有できるようになり、顧客満足度・単価アップ・スタッフの提案力向上などに貢献しています。
注意|導入すればDXになるわけではない
ただし、こうしたスマートミラーも「導入しただけで成果が出るわけではない」という点には注意が必要です。
- ・現場で使いこなせなければ、形だけのシステム化に終わる
- ・導入費用と運用負荷に対するリターンが見合わない場合もある
大切なのは、デジタル導入を「ブランディング戦略」や「価値設計」の一環として捉えることです。
美容室のように顧客が体験を通じて価値を判断する業界では、スマートミラーはブランディングにも非常に効果的。高単価メニューへの誘導や、新規集客の差別化要素として活用されるケースも増えています。
まとめ|“やった気”のDXでは意味がない
DXを名乗るには、「やったこと」よりも「何を変えられたか」が重要です。
スマートミラーのようなデジタル技術も、顧客の価値体験や事業設計まで変革できてはじめてDXと呼べます。
デジタルを“導入する”のではなく、顧客との関係性を“再構築する”こと。それがDXの本質です。